これで何ができるか

AIと作業していると、説明はできないけれど「なんか違う」と感じる瞬間があります。そして多くの場合、言葉にできないまま、なんとなく作業を続けてしまいます。AIは違和感に気づかないので、違う方向のまま完成度だけが上がっていきます。あとで壊すものを、丁寧に作っている状態です。

先に結論を言うと、違和感は誤報ではなく、いちばん早い警報です。このサイトの記事も、「AIの要約に同じような一文が並んでいる気がする」という違和感から調べたら、59件中59件に同じ埋め草が入っていたことがあります(その顛末)。言葉になる前の段階で止まってよいのです。

「なんか違う」の3つの正体と、それぞれにかける一言を並べた図。結果が違う→「期待していたのは◯◯、出てきたのは△△」。進め方が違う→「いったん止めて、途中で1回見せて」。目的からズレた→「最初の依頼を引用して。対応してる?」。どれか分からなければ、それ自体をAIに聞く。
違和感の正体はだいたい3つに分かれます。どれか分かればかける一言が決まり、分からなければ「分からない」ごとAIに渡せます。

前提

かかる時間 5分
費用 無料
必要なもの どのAIでも使えます。準備も不要です
プログラミング 不要。この記事の指示文をコピーして貼るだけです

必要なのは道具ではなく、「違和感を覚えた時点で止まっていい」という許可を自分に出すことだけです。

AIへの頼み方

1. まず止める — 理由は後でいい

違和感を覚えた瞬間に使う一言です。理由を説明できなくてかまいません。

いったん手を止めてください。 いま何をどこまで作ったか、3行で教えてください。続きを進めるかは、それを読んでから判断します。

AIは止まれと言われない限り走り続けます。「止まって」に説明責任はありません。先に止めてから考えるほうが、走らせながら考えるより安くつきます。

2. 言葉にできないなら、言葉にする作業を手伝わせる

「なんか違う」の一番の困りごとは、何が違うのか自分でも分からないことです。それなら、その特定ごとAIに頼めます。

いまの結果に違和感がありますが、うまく言葉にできません。 原因を一緒に特定してください。私に質問を1つずつしてください。「はい/いいえ」か一言で答えられる質問だと助かります。

違和感の言語化は、AIが手伝える作業です。「結果と進め方、どちらが気になりますか」「見た目と中身、どちらですか」と聞かれて答えるうちに、だいたい3〜4問で正体が見つかります。

3. 駄目出しではなく「差分」で伝える

正体が分かったら、良い悪いではなく期待とのズレとして伝えます。

駄目出しではなく、期待との差分を伝えます。 期待していたのは◯◯です。実際に出てきたのは△△でした。この差はどこで生まれましたか。私の頼み方に原因があるなら、それも教えてください。

「ダメです」「違います」だけだと、AIは何が悪かったのか分からないまま、当てずっぽうの作り直しを始めます。差分で言えば、直る場所が1箇所に絞られます。

4. 目的に戻る — ズレは根元から確かめる

作業が長くなったときの違和感は、目の前の結果ではなくそもそも論であることが多いです。

最初に私が頼んだことを、そのまま引用してください。 いまやっている作業は、その依頼のどの部分に対応していますか。どの部分にも対応していない作業があれば、それも正直に列挙してください。

「そのまま引用して」が効きます。要約させると、ズレた現状に引っ張られた要約が返ってきて、ズレが見えなくなります。

5. 進む前に、戻れる目印を作らせる

違和感があるのに進むしかない場面では、せめて退路を作ります。

ここから先へ進む前に、いまの状態に戻れる目印(保存やコピー)を作ってください。 この先の変更が気に入らなかったら、その目印まで戻ります。戻り方も一言で教えてください。

「違ったら戻れる」と分かっているだけで、違和感の精度が上がります。戻れないと思っていると、人は違和感に蓋をして進んでしまうからです。

うまくいかないときの言い直し方

違和感を伝えたら、全部作り直された

一番よくある事故です。1つ直してほしかっただけなのに、良かった部分まで消えます。

全部は作り直さないでください。変えてほしいのは◯◯だけです。それ以外は、いまのまま残してください。 作り直しに入る前に、何を変えて何を残すつもりか、先に一覧で見せてください。

範囲を区切る言い方は「ついでに整理しておきました」と言わせない頼み方にまとめてあります。

疲れているだけかもしれない

違和感には、成果物のせいではなくこちらの状態のせいのものも混ざります。深夜や連続作業の終盤の違和感は、判定に向きません。

今日はここまでにします。いまの状態と、次にやる予定だったことを、明日の私が読んで分かるように短くまとめてください。

疲れているときは、違和感の「検知」だけして「判定」を翌朝に回すのが一番安全です。ひと晩置いて消える違和感は疲れで、残る違和感は本物です。

同じ違和感を、前にも感じた気がする

二度目の違和感は、個別の直しではなく仕組みの合図です。

この違和感を伝えるのは二度目です。三度目が来ないように、直し方を私の指示待ちにせず、仕組みとして提案してください。 今回だけ直すのではなく、次から自動で同じ品質になる方法がいいです。

実例があります。このサイトで「文字が多くて目が疲れる。図が欲しい」という違和感を伝えたところ、その記事に図が足されただけでなく、以後の記事に自動で図が入る仕組みに変わりました。違和感の伝え先を「作品」から「工程」に変えると、同じ不満は二度と来ません。決めた方針を忘れさせない方法はAIに「記憶」を持たせるにあります。

応用・次の一手

違和感への対処がうまくなると、逆のこともできるようになります。先回りして違和感を聞き出す頼み方です。

作業に入る前に確認です。この依頼を進めたとき、私が後から「なんか違う」と言い出しそうな点を3つ予想してください。 予想が当たっていそうなら、先にそこの希望を聞いてください。

AIは自分の作るものの「よくある不満」を知っています。先に聞いてしまえば、違和感は起きる前に潰せます。

最後にひとつ。この記事の頼み方は全部、違和感を我慢しないための道具です。AIとの作業で一番もったいないのは、失敗ではなく、違うと感じながら黙って付き合い続ける時間です。