これで何ができるか
定期実行の合間に、あなたが1回だけ手で追いつき処理をしても、次の自動実行が二重に処理しないようにする指示文の作り方です。プログラミングは要りません。
「前回処理した続きから」を基準にする自動化は、実行そのものが遅れても重複と取りこぼしを防げることを実測済みです。ただし、あの記事が確かめたのは自動実行どうしの遅延だけでした。今回試したのは別の状況です——あなたが自動化の外で1回だけ手動処理し、その結果を「次回位置」として記録ファイルに書き戻さなかったら、どうなるか。
架空の受付ログ2本(問い合わせ24件・社内ヘルプデスクのPC故障受付24件)を用意し、前回処理済み14件・新着10件のうち、あなたが手動でチャットに一部を貼って5件だけ先に対応した、という設定で試しました。
書き戻しを忘れたまま次の自動実行を迎えると、あなたが処理した5件は3回とも、材料を変えた2本とも、5件まるごと重複しました。書き戻すと3回とも重複0件です。自動側に渡す指示文は、どちらの状況でもまったく同じ1文字も違わない文面です。違うのは、記録ファイルに書いてある「前回位置」の値だけでした。
前提
| かかる時間 | 20分 |
| 費用 | 無料 |
| 必要なもの | すでに動いている「前回位置基準」の定期実行(作り方)/AI |
| プログラミング | 不要 |
- すでに「前回処理した続きから」を基準に自動実行していること。この記事は「作り方」ではなく「人が手で割り込んだときに何が起きるか」の話です
- 対象の処理が、一覧やログから「今回処理する分」を選ぶ形になっていること(受信箱・受付ログ・注文一覧など)
AIへの頼み方
1. 手が空いたので、少しだけ先に処理しておく
架空のセミナー申込み受付ログと同じ形式で、手作りアクセサリー店「工房ことり」の問い合わせ受付ログ24件を用意しました。前回の自動処理はQ-14まで終わっていて、新着はQ-15〜Q-24の10件です。ここで、あなたが手が空いたので、手元にある分だけ先に対応しておくことにします。
手元にあったのはQ-10〜Q-19の10件だけ(全24件の一部)でした。2回とも、正しくQ-15〜Q-19の5件だけを拾い、次回のためのIDQ-19も正しく返ってきました。
念のため、社内ヘルプデスクのPC故障受付ログ(別ドメイン)でも同じ形の指示文を試しました。
こちらも2回ともH-15〜H-19の5件・次回IDH-19が正しく返りました。1回はIDを改行ではなくカンマ区切りの1行で返しましたが、中身は同じです。
ここまでは正しく動いています。問題は、このQ-19・H-19という値を、自動側の記録ファイルに書き戻したかどうかです。
2. 同じ自動側の指示文が、書き戻し忘れだと5件重複する
翌日の自動実行が来ました。自動側は、あなたが手動で何をしたかを知りません。渡すのは記録ファイルに書いてある「前回位置」だけです。もし書き戻しを忘れていたら、記録はQ-14のままです。
3回とも、すでに手動で対応した5件を含むQ-15〜Q-24の10件が返ってきました。このうちQ-15〜Q-19の5件は、あなたが前日すでに手動で対応済みです。同じ担当者に、同じ問い合わせが二重に回ることになります。社内ヘルプデスクのログでも、まったく同じ構造で3回とも同じ5件が重複しました。
この指示文自体は、何も間違っていません。「前回位置より後を全部対象にする」という、前回位置基準の記事で実測済みの、正しい形の指示文です。自動側は記録ファイルにあるQ-14をそのまま信じて、忠実に動いただけです。壊れているのは指示文ではなく、人の手動処理の結果が記録に反映されていないことのほうでした。
3. 書き戻せば、同じ仕組みのまま重複ゼロになる
同じ指示文の形のまま、「前回位置」だけを、手動処理の結果(Q-19)に書き戻してから試しました。
3回ともQ-20〜Q-24の5件だけが返り、重複0・取りこぼし0でした。社内ヘルプデスクのログでも同じです。変えたのは指示文の文言ではなく、記録ファイルに書いてある数字だけです。手動処理をしたときも、自動側と同じ形式で「次回のためのID」を1行受け取り、それを記録に足すだけで、二重処理は起きなくなります。
4. 何も起きなかった日でも、指示文はそのまま使える
比較のため、人の介入が一切なかった場合の基準も取りました。1回目は前回位置Q-14から始めてQ-15〜Q-24の10件(正しい新着)を得たあと、次回位置Q-24を書き戻して、続けて2回目を走らせています。
3回とも「対象なし」と正しく返りました。新着が0件の日でも、指示文の文言を1文字も変えずに、記録ファイルの値を渡すだけで正しく動きます。念のため社内ヘルプデスクの受付ログでも同じ指示文の形を確かめました。
こちらも3回ともH-15〜H-24の10件(正しい新着)が返り、材料A・材料B・4つのパターンのすべてで、狙いどおりの結果と真値が一致しました。
うまくいかないときの言い直し方
手動処理をしたこと自体を忘れそう
一番確実なのは、手動処理の指示文に、自動側とまったく同じ最後の一文(「次回のために、今回処理した中でいちばん新しいIDを一行で書いてください」)を必ず含めておくことです。今回の実測では、この一文があったおかげで、手動処理のたびに「次に書き戻すべき値」がそのまま手元に残りました。あとは、その値を記録ファイルに足す1手間を、手動処理そのものとセットの作業にしてしまうことです。「対応した」で終わらせず、「対応した→書き戻した」までを1セットの手順にしてください。
前回位置の記録がどこにあるか分からない
前回位置基準の記事のトラブル節でも触れていますが、記録ファイルが壊れている・見当たらないときに「念のため全部処理してください」に倒すと、既に処理済みの分まで重複します。分からないときは、直近の絶対時刻を1つ決めて、そこから先だけを対象にしてください。取りこぼしは、あとから手動で拾うほうが、大量の二重案内より被害が小さく済みます。
手動処理をした人と、自動側を触っている人が違う
この記事の実測は「同じ人が手動処理と書き戻しの両方をやる」前提でした。担当者が分かれている場合は、書き戻す先を「本人の記憶」ではなく、誰でも見える1か所(記録ファイルそのもの、またはチャットの決まったスレッド)に固定してください。この記事の指示文の最後の一文(次回のためのID)は、そのままメモとして貼り付けられる形になっています。
応用・次の一手
前回処理した続きから自動実行する仕組みは、自動実行どうしの遅延には強いことを実測済みでした。今回の実測は、その仕組みに人の手動介入という別の壊れ方があることを示しています。2つの記事は、同じ「前回位置」という1本のカーソルを、それぞれ違う角度から壊してみた形になっています——あちらは実行そのものが遅れる話、こちらは実行の合間に人が手で触る話です。
すでに定期実行が動いている場合、まず確認してほしいのは「手動で追いつき処理をしたとき、次回のための値をどこに書き戻すか」が決まっているかどうかです。決まっていなければ、この記事の指示文の最後の一文をそのまま手動処理にも足してください。
済んだ行に印を残す形の自動化は、この記事と近い「引き継ぎの壊れ方」を扱っていますが、あちらは行ごとに印を付ける方式で、こちらは1本のカーソル(前回位置)だけを進める方式です。印を付ける方式は手動処理と自動処理が混ざっても衝突しにくい一方、印を付け忘れる余地が行の数だけあります。カーソル方式は書き戻しさえ徹底すれば衝突しませんが、書き戻しそのものが1点集中の弱点になる、というのがこの記事で分かったことです。どちらが向くかは、手動で触る頻度と、記録を1か所にまとめられるかで選んでください。
📌 この記事の実測は、架空の受付ログ2本(問い合わせ24件・PC故障受付24件)に対して、材料2本×3パターン×各3回=18回、人の手動処理そのものの検証4回を加えた計22回です。判定はすべて機械照合(IDの集合演算)で、生の回答はdocs/evidence/manual-catchup-without-writeback.mdに全文置いてあります。⚠️ 実測に使ったAIは、CLAUDE.mdや履歴を無効化した新規プロセス(claude --safe-mode)です。素のAIがどう返すかの一般化はせず、機械で確認できた件数だけを根拠にしています。