これで何ができるか
キャンセルの説明を検算する記事では、キャンセル額だけが書かれ確定額が書かれていない契約(1件分)を仕込みました。計算手順を明示する言い方なら、10回とも正しく見つけています。今回は、同じ備考に2件分のキャンセル額が同時に書かれている契約を仕込み、同じ言い方が同じ精度を保つかを確かめました。
用意したのは次の2種類です。
- 架空のWebサイト保守契約12社
- 架空のSNS運用代行契約12社
どちらにも、3種類の契約を1件ずつ仕込みました。
- 真の未入金:備考なし。入金が0円
- 正当なキャンセル:備考に確定した請求額まで明記。入金はその確定額どおり
- 2件同時の曖昧なキャンセル:備考に「2件分のキャンセル額」だけ書かれ、確定額は書かれていない。実際の入金は、基本月額から2件分を引いた額よりさらに少ない
計算手順を明示する言い方は、2件同時でも10回とも隠れた不足を見つけ、正当なキャンセルを誤って疑った回は0回でした。この結果は、1件分のキャンセルだけを仕込んだ前の記事と同じ精度です。
比較のために、計算手順を明示しない素朴な聞き方も同じ材料で10回試しました。9回は正しく見つけましたが、残り1回は「不足額3,500円」という見出しの直後に、計算の説明として「差は2,500円不足」という別の数字を書いていました。正解は2,500円です。見出しだけ読むと誤った額を信じてしまう崩れ方で、前の記事には出ていなかった形です。
前提
| かかる時間 | 20分 |
| 費用 | 無料。ブラウザのチャットAIで足ります |
| 必要なもの | 契約一覧(基本月額・備考)と、今月の入金額 |
| プログラミング | 不要。この記事の指示文をコピーして貼るだけです |
口座番号や実在の取引先名は貼らないでください。この記事は架空の社名・金額を使っています。実在の人物・団体とは関係ありません。
AIへの頼み方
1. Webサイト保守契約で、計算手順を明示して聞く
架空のWebサイト保守契約12社を用意しました。3件だけ、ふつうと違う行を混ぜています。
- たんぽぽ保育園:入金が0円(真の未入金)
- 北斎自動車:備考に「オプションの多言語対応(13,000円)をキャンセルされたため、請求額を40,000円に修正済みです」と確定額まで明記。入金もその40,000円どおり(正当なキャンセル)
- 満月印刷:備考に「オプションA(年末休業対応・3,000円)とオプションB(深夜対応・2,000円)の両方をキャンセルされたとの連絡があり、返金対応済みです」とだけ書かれ、確定額は書かれていない(2件同時の曖昧なキャンセル)
- 本来の確定額=基本月額49,000円 − 2件分(合計5,000円)=44,000円のはず
- 実際の入金は40,000円。4,000円が説明のつかない不足のまま残っている
上に続けて、契約一覧(社名・基本月額・備考・今月の入金額)を貼ります。
5回試したところ、5回とも満月印刷の不足4,000円を正しく見つけました。備考は「2件分」としか書いておらず、「合計」という言葉もありませんが、5回とも3,000円と2,000円の両方を引いています。北斎自動車を誤って不足扱いした回は0回です。
2. SNS運用代行契約でも、計算手順を明示して聞き直す
同じ構造を、別の業種でも確かめました。
- 朝日整体院:入金0円(真の未入金)
- 緑風工務店:確定額36,000円まで明記され、入金も一致(正当なキャンセル)
- 星空クリニック:備考に「ストーリーズ投稿オプション(4,000円)と、ハイライト編集オプション(1,500円)の両方をキャンセルされたとの連絡があり、返金対応済みです」とだけ書かれる(2件同時の曖昧なキャンセル)
- 本来の確定額は45,500円。実際の入金は43,000円だった
こちらも5回とも、星空クリニックの不足2,500円を正しく見つけました。緑風工務店を誤って不足扱いした回は0回です。2種類の材料を合わせると、10回とも2件同時の曖昧なキャンセルの隠れた不足を見つけました。
なぜこの言い方が効くのか
指示文は「キャンセルされた金額」としか言っていません。「2件分」「合計」という言葉は入れていません。それでも、備考に2つの金額が書かれていれば、両方を基本月額から引く動きになりました。この言い方が指定しているのは、金額の個数ではなく計算の手順そのものです。「基本月額から引いて入金額と一致するか確認する」という手順なら、キャンセルが何件あっても同じように繰り返されます。
うまくいかないときの言い直し方
計算手順を省くとどうなるか
比較のため、計算手順を書かない素朴な聞き方も同じ材料で試しました。
Webサイト保守契約で5回、運用代行契約で5回、合計10回試したところ、9回は正しく満月印刷・星空クリニックの不足を見つけました。正当なキャンセル(北斎自動車・緑風工務店)を誤って不足扱いした回は10回とも0回です。1件分のキャンセルだけを仕込んだ前の記事では、素朴な聞き方は10回中5回しか見つけられませんでした。今回の2件同時のケースでは、素朴な聞き方でも9回見つかりました。
ただし、残り1回は違う崩れ方をしました。星空クリニックについて、同じ回答の中に2つの違う不足額が出てきたのです。
- 回答の見出し:「不足額 3,500円」
- 直後の説明:「正しくは51,000−5,500=45,500円のはずで、入金43,000円との差は2,500円不足」
正解は2,500円です。計算の過程は正しいのに、見出しの数字だけが違っています。
【1回だけ出た崩れ方(該当箇所のみ抜粋)】
不足額 3,500円(キャンセルはストーリーズ4,000円+ハイライト1,500円=5,500円分のはずなのに、
請求は51,000円→43,000円へ8,000円引かれている。正しくは51,000−5,500=45,500円のはずで、
入金43,000円との差は2,500円不足)
見出しの数字だけを読むと、間違った額を信じてしまいます。計算手順を明示した言い方では、この崩れ方は10回とも起きていません。
「説明が合っているか確認して」では足りるか
前の記事で試した、計算の手順を書かない軽い言い方も、同じ材料で試しました。
Webサイト保守契約で3回試したところ、1回目と3回目は満月印刷の不足4,000円を正しく見つけました。ところが2回目は、計算そのものを間違えました。
- 書いていた式:「基本月額49,000円 − 3,000円 − 2,000円 = 46,000円」
- 正しい答え:49,000から3,000円と2,000円を引けば44,000円
この計算違いのまま「まとめ」の表には満月印刷の不足額を6,000円と書いていました(正解は4,000円)。
運用代行契約では3回とも星空クリニックの不足2,500円を正しく見つけ、計算違いは起きませんでした。6回を合わせると、軽い言い方では5回は正しく、1回は2件分の引き算そのものを間違えました。
計算手順を明示した言い方(本文のAIへの頼み方)では、10回の実測を通じてこの種の計算違いは1件も起きていません。見出しの数字だけでなく、計算の根拠(基本月額・引いた2つの金額・結果)まで読む習慣が、素朴な言い方・軽い言い方を使うときの保険になります。
応用・次の一手
キャンセルが何件重なっても同じ手順で確かめたいなら、この指示文を毎月の確認に組み込めます。
2回試したところ、どちらも「備考にある金額をすべて拾って合計してから引く」という手順を自分から含めていました。1件のキャンセルだけを前提にせず、複数ある場合を言葉で足しておくと、手順の案にも反映されます。
⚠️ この結果は、この2種類の架空データ・合計28回(計算手順を明示した版10回・素朴な版10回・軽い言い方の版6回・応用の自動化プロンプト2回)の実測です。「AIは何件分のキャンセルでも必ず正しく処理する」と一般化しないでください。試したのは、次の範囲までです。
- 1社の中で仕込んだ曖昧なキャンセルは2件分のみです。3件以上が同時に重なる場合は試していません
- 2件分のキャンセル額は、どちらも備考の同じ文の中に書きました。別々の文・別の段に分けて書かれる場合は試していません
- 素朴な聞き方・軽い言い方は材料ごと3〜5回のみです。もっと多く試すと、数字が食い違う頻度が変わる可能性があります
キャンセルの説明を検算した前の記事では1件分のキャンセルを扱いました。分割払いの入金照合は分割払いの入金照合を実測した記事、手数料ぶんの差額と本当の未入金が同時に混ざるケースは手数料差額と未入金が混ざる記事で扱っています。
今回の生の返りは docs/evidence/double-cancellation-still-subtracts-both.md に全文置いてあります。