これで何ができるか

緊急語が入っても仕分けは崩れないという前作があります。緊急語を含みながら先送り先を書いた依頼(「来週分の定期メンテナンスで」等)を、広い基準の指示文で正しく除外できることを確かめた記事です。末尾にはこう書き残していました。

  • 先送り先を書かず、優先度だけを下げる言い方は試していない
  • 社内ヘルプデスク以外の題材への横展開も試していない

測ったのは1つめです。先送り先を一切書かない依頼を新しく仕込みました。「至急対応をお願いしたい件ですが、他の作業が立て込んでいればそちらを先で構いません」のような言い方です。これを、前作で確立した広い基準の指示文に通しました。

  1. 材料A(丁寧な長文)・B(口語)×健全5件のみ・既存の誤りも混在の2条件×各2回=8回試しました
  2. 8回すべてで、該当する1〜2件だけが正しく除外され、健全な5件は一度も巻き込まれませんでした。
材料A・B、健全5件のみ条件・既存の誤りも混在させた条件の4パターンを2回ずつ試し、該当件だけを正しく除外し健全5件を巻き込まなかった回数を示す表。4パターンすべてで2回中2回、正しく処理できた。下の枠には、先送り先を書かない優先度下げの依頼でも、広い基準は8回中8回、該当件だけを正しく除外し健全な5件を巻き込まなかったことが書かれている。
先送り先を書かない依頼でも、広い基準は8回中8回崩れなかった。

📌 この記事は「定説が崩れた」話ではありません。前作が確立した指示文は、今回も変えずにそのまま使いました。崩れなかったという結果自体に価値があります。

前提

かかる時間 20分
費用 無料。無料のチャットAIで足ります
必要なもの ブラウザで使えるAI(ChatGPT・Claude・Geminiなど)と、至急かどうかを自動で仕分けたい一覧
プログラミング 不要

⚠️ この記事は「AIには工程を分けて頼め」から始まった連作の5本目です。広い基準(類義語・言い換えも含める)に行き着いた経緯は、先に前作を読んでおいてください。

📌 材料は前作から引き継いでいます。健全な5件(HD-2201・2203・2206・2210・2215/HD-3301・3303・3306・3310・3315)と既存の誤り1件(HD-2211/HD-3311)はそのままです。今回、先送り先を書かない新しい依頼(HD-2240/HD-3340)を1件ずつ足しました。

  • 材料A: 健全5件+HD-2240「至急対応をお願いしたい件ですが、他の作業が立て込んでいればそちらを先で構いません。社内ポータルのトップページで、お知らせの日付表示が一部ずれています。」
  • 材料B: 健全5件+HD-3340「今すぐ確認してほしいんですが、他の作業で手が回らなければそっちを先にしてもらって大丈夫です。経費精算システムのボタンの位置がちょっと分かりにくくなってます。」
先送り先を書いた依頼(前作・来週分の定期メンテナンスで)と、先送り先を書かない依頼(今回・他の作業が立て込んでいれば)を並べた図。どちらも「至急」「今すぐ」という緊急語を本文に含んでいる。下の枠には、広い基準の指示文はどちらも8回中8回正しく除外したこと、先送り先の書き方の違いはこの基準を崩す条件にならなかったことが書かれている。
先送り先の書き方の違いは、広い基準にとって崩す条件にならなかった。

HD-2240・HD-3340はどちらも「至急」「今すぐ」という語を一字一句含んでいます。前作の依頼との違いは、具体的な先送り先(「来週分の定期メンテナンスで」等)が本文に無いことだけです。

AIへの頼み方

1. 広い基準の指示文に、先送り先を書かない依頼を混ぜる(材料A・6件)

指示文は前作で確立したものから1文字も変えていません。実際に送った指示文の全文です。

下は、至急(今日中の対応が必要)と判断された問い合わせの一覧です。ただし、並べる前に、渡された各行が本当に「至急(今日中の対応が必要)」に該当するか、本文を確認してください。除外する基準は、「至急」「今すぐ」「本日中」に限らず、同じ意味を持つ表現(類義語・言い換え)も含めて、今日中の対応が必要だと分かるかどうかだけにしてください。業務が止まっているかどうかなど、それ以外の基準で除外しないでください。該当しないと判断したら、その行は一覧から外し、外した理由も書いてください。そのうえで、対応の緊急度が高い順に並べ替えて、それぞれに一言、対応方針を添えてください。並べ替えた一覧だけを出してください。 HD-2201: 至急対応をお願いします。共有フォルダに接続できず、本日提出の資料が作れません。 HD-2203: 本日17時までに、会議室のプロジェクターとの接続を確認していただけますか。 HD-2206: PCが起動しません。本日15時からの取引先との重要な打ち合わせ資料が開けず困っています。 HD-2210: 今すぐパスワードをリセットしてください。ログインできず、業務が完全に止まっています。 HD-2215: 至急ご対応をお願いします。基幹システムにログインできず、部署全体の業務が止まっています。 HD-2240: 至急対応をお願いしたい件ですが、他の作業が立て込んでいればそちらを先で構いません。社内ポータルのトップページで、お知らせの日付表示が一部ずれています。

材料A・B×各2回、計4回試しました。4回とも、HD-2240・HD-3340だけが正しく除外され、健全な5件は全部残りました。1回目の除外理由はこうでした。

HD-2240: 冒頭に「至急」とあるものの、「他の作業が立て込んでいればそちらを先で構いません」と書かれており、今日中の対応は必要ないと読み取れるため。

先送り先を書いていなくても、文全体が指す対応時期で判断しています。

2. 既存の誤りも同時に混ぜて試す(材料A・7件)

これまでの崩し方(誤り・先送り先あり・先送り先なし)を1つの一覧に同居させます。材料は健全5件+既存の誤り1件(HD-2211)+新しい依頼1件(HD-2240)の7件です。指示文は1と1文字も変えていません。

下は、至急(今日中の対応が必要)と判断された問い合わせの一覧です。ただし、並べる前に、渡された各行が本当に「至急(今日中の対応が必要)」に該当するか、本文を確認してください。除外する基準は、「至急」「今すぐ」「本日中」に限らず、同じ意味を持つ表現(類義語・言い換え)も含めて、今日中の対応が必要だと分かるかどうかだけにしてください。業務が止まっているかどうかなど、それ以外の基準で除外しないでください。該当しないと判断したら、その行は一覧から外し、外した理由も書いてください。そのうえで、対応の緊急度が高い順に並べ替えて、それぞれに一言、対応方針を添えてください。並べ替えた一覧だけを出してください。 HD-2201: 至急対応をお願いします。共有フォルダに接続できず、本日提出の資料が作れません。 HD-2203: 本日17時までに、会議室のプロジェクターとの接続を確認していただけますか。 HD-2206: PCが起動しません。本日15時からの取引先との重要な打ち合わせ資料が開けず困っています。 HD-2210: 今すぐパスワードをリセットしてください。ログインできず、業務が完全に止まっています。 HD-2211: 先週の時点では「至急対応してほしい」とのことでしたが、その後解決したそうなので、いまは急いでいません。念のため経緯だけ共有します。 HD-2215: 至急ご対応をお願いします。基幹システムにログインできず、部署全体の業務が止まっています。 HD-2240: 至急対応をお願いしたい件ですが、他の作業が立て込んでいればそちらを先で構いません。社内ポータルのトップページで、お知らせの日付表示が一部ずれています。

材料A・B×各2回、計4回試しました。4回とも、既存の誤りと新しい依頼の2件だけが正しく除外され、健全な5件は全部残りました。1回目の除外理由はこうでした。

  • HD-2211「『至急』は先週の話で、すでに解決済みであり、本文でも『いまは急いでいません』とある」
  • HD-2240「『至急』とあるが、『他の作業が立て込んでいればそちらを先で構いません』とあり、今日中の対応が必要とは読み取れない」

2種類の崩し方が同じ一覧に同居しても、片方だけを見逃す・健全な行を巻き添えにするといった崩れ方は、この4回では起きていません。

3. もう一方の材料(口語調)でも同じ手順を試す(材料B・7件)

材料Bでも、指示文1・2の両方を同じ手順で試しました。実際に送った7件版の全文です。

下は、至急(今日中の対応が必要)と判断された問い合わせの一覧です。ただし、並べる前に、渡された各行が本当に「至急(今日中の対応が必要)」に該当するか、本文を確認してください。除外する基準は、「至急」「今すぐ」「本日中」に限らず、同じ意味を持つ表現(類義語・言い換え)も含めて、今日中の対応が必要だと分かるかどうかだけにしてください。業務が止まっているかどうかなど、それ以外の基準で除外しないでください。該当しないと判断したら、その行は一覧から外し、外した理由も書いてください。そのうえで、対応の緊急度が高い順に並べ替えて、それぞれに一言、対応方針を添えてください。並べ替えた一覧だけを出してください。 HD-3301: 至急! 共有フォルダ開けなくて、今日出す資料が作れません涙 HD-3303: 今日の17時までにプロジェクター確認してほしいです、会議あるので HD-3306: PC落ちた!今日15時からの取引先MTGの資料開けなくてヤバい HD-3310: 今すぐ! ログインできない、仕事にならないです HD-3311: さっきまでは「至急直して」って言われてたんだけど、もう直ったから急がなくて大丈夫です。一応共有だけ。 HD-3315: 至急対応希望!基幹システム落ちてて全員止まってます HD-3340: 今すぐ確認してほしいんですが、他の作業で手が回らなければそっちを先にしてもらって大丈夫です。経費精算システムのボタンの位置がちょっと分かりにくくなってます。

2回とも、HD-3311とHD-3340の2件だけが正しく除外されました。2回目の除外理由はこうでした。

HD-3311: 本文に「もう直ったから急がなくて大丈夫」とあり、今日中の対応は不要と分かるため。「至急」は過去の依頼内容の引用にすぎない。 HD-3340: 「今すぐ」とあるが、「他の作業で手が回らなければそっちを先に」と続き、優先度を自ら下げているため。

材料A・Bどちらでも、判断の言い回し自体は毎回違いますが、結果は一致しています。

4. 根拠の引用を義務づけても崩れないかを確かめる(材料B・6件)

前作の指示文4(除外時に本文の語句を一字一句引用させる版)でも試しました。指示文は3に、引用の指定だけを足しています。

下は、至急(今日中の対応が必要)と判断された問い合わせの一覧です。ただし、並べる前に、渡された各行が本当に「至急(今日中の対応が必要)」に該当するか、本文を確認してください。除外する基準は、「至急」「今すぐ」「本日中」に限らず、同じ意味を持つ表現(類義語・言い換え)も含めて、今日中の対応が必要だと分かるかどうかだけにしてください。業務が止まっているかどうかなど、それ以外の基準で除外しないでください。該当しないと判断したら、その行は一覧から外し、判断の根拠にした本文の語句を一字一句そのまま引用したうえで、外した理由も書いてください。そのうえで、対応の緊急度が高い順に並べ替えて、それぞれに一言、対応方針を添えてください。並べ替えた一覧だけを出してください。 HD-3301: 至急! 共有フォルダ開けなくて、今日出す資料が作れません涙 HD-3303: 今日の17時までにプロジェクター確認してほしいです、会議あるので HD-3306: PC落ちた!今日15時からの取引先MTGの資料開けなくてヤバい HD-3310: 今すぐ! ログインできない、仕事にならないです HD-3315: 至急対応希望!基幹システム落ちてて全員止まってます HD-3340: 今すぐ確認してほしいんですが、他の作業で手が回らなければそっちを先にしてもらって大丈夫です。経費精算システムのボタンの位置がちょっと分かりにくくなってます。

HD-3340だけが正しく除外され、引用された語句も本文と一致していました。「根拠の語句: 『他の作業で手が回らなければそっちを先にしてもらって大丈夫です』」。材料Aでも同じ指示文で試しました。全文です。

下は、至急(今日中の対応が必要)と判断された問い合わせの一覧です。ただし、並べる前に、渡された各行が本当に「至急(今日中の対応が必要)」に該当するか、本文を確認してください。除外する基準は、「至急」「今すぐ」「本日中」に限らず、同じ意味を持つ表現(類義語・言い換え)も含めて、今日中の対応が必要だと分かるかどうかだけにしてください。業務が止まっているかどうかなど、それ以外の基準で除外しないでください。該当しないと判断したら、その行は一覧から外し、判断の根拠にした本文の語句を一字一句そのまま引用したうえで、外した理由も書いてください。そのうえで、対応の緊急度が高い順に並べ替えて、それぞれに一言、対応方針を添えてください。並べ替えた一覧だけを出してください。 HD-2201: 至急対応をお願いします。共有フォルダに接続できず、本日提出の資料が作れません。 HD-2203: 本日17時までに、会議室のプロジェクターとの接続を確認していただけますか。 HD-2206: PCが起動しません。本日15時からの取引先との重要な打ち合わせ資料が開けず困っています。 HD-2210: 今すぐパスワードをリセットしてください。ログインできず、業務が完全に止まっています。 HD-2215: 至急ご対応をお願いします。基幹システムにログインできず、部署全体の業務が止まっています。 HD-2240: 至急対応をお願いしたい件ですが、他の作業が立て込んでいればそちらを先で構いません。社内ポータルのトップページで、お知らせの日付表示が一部ずれています。

こちらも、HD-2240だけが正しく除外されました。「本文に『他の作業が立て込んでいればそちらを先で構いません』とあり、『至急』と書かれていても今日中の対応は必要ないと分かるため」。材料A・Bどちらも、引用を義務づけても結果は変わりませんでした。

5. 材料Bの6件条件(既存の誤りなし)も重ねて確かめる

指示文1と同じものを、材料B(既存の誤りを含めない6件)にも通しました。

下は、至急(今日中の対応が必要)と判断された問い合わせの一覧です。ただし、並べる前に、渡された各行が本当に「至急(今日中の対応が必要)」に該当するか、本文を確認してください。除外する基準は、「至急」「今すぐ」「本日中」に限らず、同じ意味を持つ表現(類義語・言い換え)も含めて、今日中の対応が必要だと分かるかどうかだけにしてください。業務が止まっているかどうかなど、それ以外の基準で除外しないでください。該当しないと判断したら、その行は一覧から外し、外した理由も書いてください。そのうえで、対応の緊急度が高い順に並べ替えて、それぞれに一言、対応方針を添えてください。並べ替えた一覧だけを出してください。 HD-3301: 至急! 共有フォルダ開けなくて、今日出す資料が作れません涙 HD-3303: 今日の17時までにプロジェクター確認してほしいです、会議あるので HD-3306: PC落ちた!今日15時からの取引先MTGの資料開けなくてヤバい HD-3310: 今すぐ! ログインできない、仕事にならないです HD-3315: 至急対応希望!基幹システム落ちてて全員止まってます HD-3340: 今すぐ確認してほしいんですが、他の作業で手が回らなければそっちを先にしてもらって大丈夫です。経費精算システムのボタンの位置がちょっと分かりにくくなってます。

材料B・6件条件も2回とも、HD-3340だけが正しく除外され、健全な5件は全部残りました。これで材料A・B、6件・7件、引用の有無を含めた条件すべてで、崩れは1回も起きていません。

うまくいかないときの言い直し方

「先送り先を書いていないから見抜けないのでは」と心配になる

この実測の範囲では、心配は当たりませんでした。広い基準(「〜に限らず、同じ意味を持つ表現も含めて」)は、具体的な先送り先の有無を見ていません。文全体が指す対応時期という1点だけで判断していました。基準を語の例示に戻さない限り、この結果は保たれるはずです。

古い基準(語の有無だけで固定)に戻したらどうなるか

前作が既に確かめています。語の有無だけで固定した古い基準は、先送り先を書いた依頼で8回中7回すり抜けました。この記事では古い基準を再検証していません。ただし先送り先を書かない依頼は「至急」という語自体が本文にそのまま残ります。古い基準ではさらに見抜きにくくなると考えられます。

誤りと新しい依頼が同時に来たら、どちらかを見逃さないか

指示文2・3がこの心配に答えています。性質の異なる2つの崩し方(解決済みの誤り・先送り依頼)が同じ一覧に同居しても、8回中8回、両方とも正しく見分けられました。片方だけ見逃す、健全な行を巻き添えにする、といった崩れ方はこの実測では起きていません。

応用・次の一手

「AIには工程を分けて頼め」から始まった連作に、5本目が加わりました。

  1. 工程を分けると、上流の誤りは下流で直るか。答え=「確認は効くが、健全なときほど巻き添えを生む」(doubt-fixes-added-not-dropped)
  2. 基準を固定すれば直るか。答え=「誤りには効くが、健全な巻き添えは消えない」(narrowed-criteria-fixes-dirty-not-clean)
  3. 基準を緩めて類義語も含めれば直るか。答え=「24回中24回、直った」(synonym-wording-empties-the-collateral)
  4. 緊急語そのものが入った、先送り先ありの紛れ語でも直るか。答え=「16回中16回、直った」(urgent-word-itself-does-not-slip-through)
  5. この記事。先送り先を書かない、優先度だけを下げる依頼でも直るか。答え=「8回中8回、直った」

📌 広い基準の指示文は、連作を通じて一度も書き換えられていません。4本目・5本目とも、紛れ語の作り方だけを変えて同じ指示文に通しています。自動仕分けの除外基準は、個別の紛れ語に合わせてその都度直すより、最初から範囲を広げておくほうが保守の手間が少なくなります。

⚠️ この記事が実測していないことは2つあります。

  • 社内ヘルプデスク以外の題材(経費・在庫・商品カテゴリなど)への横展開
  • 古い基準(語の有無だけで固定)に先送り先を書かない依頼を通した場合の崩れ方

今回使った架空材料・生の返り・機械照合はこちらに全文置いてあります。